表紙 前へ 次へ 最後 目次 山下ヤス子さんと出会って
山下ヤス子さんに会ったのは初めてではなかった。しかしそれは数回に過ぎない。それにも関わらず、なぜか昔から知っていたような錯覚がある。それは山下さんのお人柄にあることは言うまでもない。
いつも前向きで、幾多の困難や壁にぶつかり乗り越えてこられたというのに、それにも関わらず、そのような苦労の微塵も見せられない山下さんは、私のような軟弱な人間には足下にも及ばない素晴らしい方である。それにはもちろん病を持つ者としての先輩であると同時に、人生の先輩である。いや、私を蘇らせて下さった大事な人となった。
山下さんという人をそんなに意識していなかった。ただ私の願いを叶えてくれる一人と考えていた。というのが本当のところである。
先日、山下さんや山下さんの下で働く人々の協力を得て、ケア付き福祉ホームにてショートステーという、人生にとって踏み台となる大事な機会を得ることができた。
これまで多くの方と出会い、接し、話をしてきた。しかし山下さんほどに私の心を揺さぶる人はいなかったように思う。そして自分の甘さを感じたこともなかった。
私はこれまで苦労と呼べるほどの苦労も挫折も味わったことがなかった。常にそばに誰かがいて、誰かが助けてくれた。そしていつも救ってくれた。それでは人間、誰しも成長などあり得ない。それがいまの私だろう。
私はいつも自分勝手な理由と口実を付け、ただ都合のいいように前向きのような考えの振りをしてきたように思う。それが山下さんの話を耳にして、前向きな考えとはこういうものということを痛烈に感じた。そして生きるとはこういうことなんだということを心で感じることができた。それは言葉ではなく、心に直接、波となって寄せてきた。もしそれを教えてと言われても、こういったことだと言葉として表現することはできない。しかし私にとってはとても刺激となった。その気持ちを忘れることのないように、またそれと同時に新しい生き方を教えていただいた気がする。
何事に対しても全力で取り組み、もっと真剣にやり抜かなければと思う。それによって道は開けることを信じる。懸命に取り組み、それで巧くいかないのであれば仕方ない。とにかく行動せず後悔はしたくない。何か行動を起こし後悔をしようと思う。それが自分の中で納得という形で処理できる。
これからどれほど生きられるのか判らない。そして生かされたあいだに、内なる思いを果たすことができるか、積極的な生き方ができるは私次第だろう。
山下さんに僅かではあるが近づけた今、彼女に負けない心構えで、与えていただいた活力をもとに歩みを続けてゆきたい。待ち構える未来に向けて。※山下ヤス子さん
社会福祉法人まほろば福祉会
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