表紙 前へ 次へ 最後 目次 畠山卓朗氏と出会って 様々な出会いの中で私の人生を変えたのは、KBマウスというパソコンのキー入力装置を通して、出会うことになった横浜市総合リハビリテーションセンターの畠山卓朗氏だ。
畠山氏と出会えたことで、命を奪れることを待つばかりの人生は大きく方向転換した。まるで私の思いや願いを叶えてくれる神が現れたような。もしもKBマウスという装置に出会わなければ、何とも退屈で無駄な時間的浪費を強いられていただろう。
障害や病による寝たきり状態にある者にとっての人生は、その日が通り過ぎるのを待っているようなもの。そして起伏のない平坦な生活でしかない。テレビを視て、三度の食事を食べさせてもらうばかり。
この世に生を受け、与られた人生を生き、誰も逃れることのできない死を迎える。しかし私は違っている。
他の章で書いたように、日頃何気なく眺めているパソコン雑誌(月刊アスキー)が、病によって心に陰が形成をはじめた私を救ってくれた。その結果、生きる姿勢に影響を与え、再び鋭気を取り戻すきっかけを下さった人に出会うことができた。
一人の出会いによって、人生がこんなにも大きく変化するとは夢にも思わなかった。畠山氏との出会いが、現在の私を作っていると言っても過言ではない。とは言うものの、同じ人間である以上生きる希望を与えることはできても、人の人生を作ることなどできはしない。あくまでも偶然の出来事に過ぎない。
病を持つ身が次第に悪化し、生きる意味を失いかけた時、畠山氏の言葉によって立ち直ることができ、自分を取り戻すことができた。
その言葉とは、「わがままを言うのが轟木君の仕事」と言われたとき、私の中のわだかまりがスッーと消えていった。
日頃から意地っ張りの性格と人に弱みを見せたくないこともあって、外にほとんど出さないのであまり知られないと思うのだが(判る人にはバレているのかも知れない)、やや落ち込んでいたときであったこともあり、私は救われた。遠くの地に居ながら、私をことを理解し、「機械を作りを通して、いつも会話しているよ」と言って下さる畠山さんに会えたことは、私にとっ
て人生最大の宝であると同時に、これ以上のものはない。
欲の深い私は多くの望みを持っている。そしてそれを叶えて下さる畠山さんには頭が下がる。これからも更に迷惑を掛けることになると思うが、畠山さんの作った機械を通した対話が永遠に続けられればと思う。
畠山卓朗氏に会えたことを感謝しながら。表紙 前へ 次へ 最後 目次