卒業式へ
入院前に,卒業研究担当のゼミ学生には,「手術があるから,卒業式には到底出られそうもないから,ごめんなさい」とただただひたすら謝り続けていた.
4年間をともに過ごした学生達の晴れ姿を見ることができないくやしさと,大切な卒業式にゼミ担当教員がいないという申し訳なさである.
そんな卒業式があと1週間後と近付いてきて,私の中ではとてもつらい思いが心の中で渦巻いていた.
それを見かねたつれあいが,フィラデルフィアカラーを頸に巻き付けても何でも,かっこ悪くても卒業式に出てあげなさいと強くすすめられた.
でも,人一倍目立つこの姿で卒業式に出席するのには,心理的にとても大きな負担であった.
それを,担当医師の1人である若い佐々木ドクターに電話でぶつけてみたところ,今の状態を外来で診た上で判断しましょうとの助言をいただいた.
さっそく九段坂病院へ出かけ,レントゲンと撮ったところ,卒業式の時間帯のみフィラデルフィアカラーを外してもよいとの判断をいただいた.これは予想外のことであった.
卒業式に出席する方向で話が決まったら決まったで,私の頭の中では次なる不安が渦巻いた.
のこのこと久しぶりに顔を出したところで,果たして学生達は喜んでくれるのだろうか,名古屋へ向かう新幹線の車中で頸がつらくなるのでは...と
それらはすべて杞憂に終わった.
卒業式会場で私を見つけるなり,私が卒業おめでとうの声を出す前に,学生1人1人から満面の笑顔で,私が無事に帰ってきたことを喜ぶ声と,手術を受けたことにたいする労いの言葉をいただいた.
それを耳にしながら,学生達が私が思っていた以上に大きく成長しているのだということを実感した.
それが何よりも嬉しかったとともに,様々な思いが渦巻いた自分に対する恥ずかしさを感じた.
学生達の晴れ姿が,涙ににじんでキラキラと輝いた.
卒業式に出ることを後押ししてくれた妻と佐々木ドクターに心から感謝したい.
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早稲田大学への転職のお知らせを頂いた折りに、ご病気のことも伺い、どんな状態なのかと心配していましたが、あなたのHPがあることを思い出し、この闘病記を見つけて読ませて頂きました。
わたしも3年ほど前に肝臓を患って1ヶ月ほど入院したことがありますが、医療専門職として、とても普段の仕事の中からは得がたい良い経験になりました。医療人、一度は病気や怪我で入院すべきだなあ!などといけないことを考えた次第です。
合わせて、別のところでご紹介されていた、高山先生の「看取り」も読みました。良いお話をありがとう。人の気持ちを察することができること、とても大事なことですね。
投稿: 秋田 裕 | 2007年4月25日 (水) 12時24分
秋田さんへ
人の気持ちを察することのまだまだできない私ですが,少しでもそこに近づけられるよう,日々反省しながらの毎日です.
コメントをありがとうございました.
投稿: 畠山卓朗 | 2007年4月25日 (水) 13時31分